忘れられない患者さん 部門

看護師視点

亡くなった娘だった

Q

いつの話か、どんな患者さんの話か、
などを教えてください

私は産婦人科のクリニックで働いていました。
その日は患者様が少なく、落ち着いていました。

Q

起きた出来事を教えてください

入り口の方にふと目をやると10歳ぐらいの女の子が1人でクリニックに入ってきました。
「この年代で1人で婦人科に来るなんて珍しい。お母さんはどこにいるんだろう」と思いました。
女の子はニコッと笑って私に会釈をしながら「よろしくお願いします」と言い、
そのままクリニックを出て行ってしまいました。

まもなくして産気づいた女性がクリニックに来て、
時間がかかりましたが無事女の子を出産しました。

その何時間か後、駆けつけたお父さんの後ろから、先ほど見た女の子が再び現れたのです。
女の子はまたニコッと笑い気づいた時にはもういませんでした。

私は娘さんだったんだなと思い、女性の方に
「さっき先に、娘さんが来てくれたんですよ。丁寧に挨拶してくれて」と話しをしました。

Q

状況がどう展開したか教えてください

すると、女性はびっくりした顔をし
「この子のお姉ちゃんが心配してきてくれたのかも…」と言いました。
実はその女性には10歳で亡くなった女の子がいたとのことでした。
「きっとあの子はお母さんが無事に出産出来るようお願いにきたのだ」と私は思いました。

Q

その結果どうなったのか、どう思ったのか
を教えてください

今でもその家族から写真付きのハガキがクリニックに送られてきます。
家族の写真には必ずあの日の女の子の写真も加えプリントされています。