「忘れられない患者さん」 部門
看護師視点
私の手
Q
いつの話か、どんな患者さんの話か、
などを教えてください
息子の幼稚園入園を機に、
ずっとやりたかった訪問看護に転職しました。
訪問看護師の仕事は一人ひとりに寄り添った看護が出来、充実した日々を送っていました。
そんな中、主人の転勤が決まり
1か月くらいかけてお世話になった利用者様に挨拶をしていました。
Q
起きた出来事を教えてください
その日は、週2回訪問していたAさんの訪問日でした。
Aさんは気難しく、他を寄せ付けない感じで、入職時から信頼関係を築くのに苦労した方でした。
口数も少なく静かで、ケアへの満足感も上手く知る事ができず、どう思われているのかわからない方でした。
ケアの終わりに少しだけお時間をいただき
「主人の転勤が決まって、今月で退職する事になりました。入職時からお世話になりました。」と伝えました。
するとAさんはびっくりした顔をし、ゆっくりと手すりを持ちながらベッドサイドへ腰かけじっと私を見て
「本当に?残念ね」と呟きました。
そして私の手を取ると「この手はこれからもたくさんの人を助けるのね。素敵な手ね。ありがとう。」と涙を流してくれました。
Q
状況がどう展開したか教えてください
病状的に起き上がるのも大変な中、起き上がり
しかもこんな温かい言葉をいただけるとは思っておらず
1年半と短い間でしたが私とAさんの間に信頼関係が生まれていたこと、
Aさんにとって満足のいく看護ケアを行えていたことが嬉しく、私もその場で泣いてしまいました。
Q
その結果どうなったのか、どう思ったのか
を教えてください
Aさんのその後はわかりません。
私は、Aさんからいただいた言葉を胸に、転勤先でも訪問看護師として働いていくつもりです。
より多くに方の心の拠り所になれるように。